島だより

~2027年 宮古島のあなたへ

三棟目の弾薬庫

宮古島の保良訓練場(弾薬庫)に建設された弾薬庫は2棟ですが、説明会時には3棟とされていました。
なぜ一棟が建設されずにいるかというと、防衛省が三棟目弾薬庫にかかる土地を用地取得できていないからです。

もとはここは宮古総合開発という鉱山会社が建設工事用の採石をしてきましたが、必ずしも自分の土地でなくても鉱山権をかけることができることから、周辺には宮古総合開発の名義になっていない土地も存在していました。

そこで「取得時効」という制度を用いて、長年使用してきた実績をもとに土地の所有権を主張して裁判所に申し立て、取得した土地が防衛省に売却されていきました。

そのうちの二つの土地について地権者の親族が異議をとなえ、裁判を起こしています。その土地が三棟目弾薬庫の予定地にあたるのです。

詳しくはしんぶん赤旗2019年の記事をご参考ください。

こうした背景のある三棟目の弾薬庫の予定地で、工事が始まっています。

沖縄防衛局に確認すると、やや曖昧ですが下記のようなことが分かりました。

【沖縄防衛局 広報回答】

――三棟目弾薬庫の着工について防衛局は認識しているか
「敷地造成の前準備段階と認識」

――県へは申請したか
「計画書と通知書を出している」

――未取得の土地が取得できる目途がついたという認識か
「敷地造成の準備段階において、未取得の土地には立ち入ってない」

手続きについて通常と異なる点があるようで、詳細を確認中です。

また、追加で「用地取得ができる前提で工事をしているのか?」ということも再質問しています。
建築に詳しい方の話では、これは造成工事ではなく基礎工事に入っているということでした。

多くの地権者を被告にしてまで取得した土地を、防衛省が買い取っていくという、国のやることとは思えない経緯で進められていく保良訓練場の現状があります。

そのため建設の進行が遅れ、帳尻合わせに未取得の土地をそのままに工事を始める始末です。
本当になぜ防衛省は、この場所を用地に選んだのでしょうか。

工事着手前の三棟目の弾薬庫の場所は、整地された空地のままとなっていましたが、7月12日に重機が入って工事が始まりました。

造成工事かと思っていると、床掘(構造物の築造を目的に施工基面から土砂等を掘り下げる作業)に入っているようにも見えます。

一通り終わったかと思ったら、さらに深く掘り進めています。土地が未取得のまま、沖縄防衛局は計画通知を提出したのでしょうか。沖縄県は、建設の許可を出したのでしょうか。

行政側が曖昧に回答を避けるため、情報開示請求しか方法がなさそうですが、もう少し調べてみたいと思います。

近隣集落からあまりに近いため音の出る訓練を行わないよう求めてきたことは、過去に記載した通りですが、その上に火薬庫の保安距離の問題もあります。
すべて訓練が住民の生活圏に近いことに端を発しているのです。

市議会では「弾薬庫火災の際に隊員は600メートル避難するよう通達があるが、500メートル範囲に避難所のある集落の住民の避難誘導は誰が行うのか」との質問に、当局が「自助・共助・公助」と言い出して議場に驚きを呼びました。

私たちの住む集落は、国が地権者を無視し、県が黙認し、市は防災・有事の避難計画について「自助努力」を示唆する――行政がまるで不可視にふるまい、見捨てられた生活圏です。

私たちはここにいて、ここに住んでいるのだと、そのことの声をあげ続けなければいけません。