島だより

~2027年 宮古島のあなたへ

価格高騰!スーパーの食料品売り場は世界経済の窓

最近わが家では手作り味噌にチャレンジしています。

スーパーに行くと、一通り値段を確認。世界の動向が品物の価格となって陳列されるのを眺める気分です。

特にじわりと価格を上げているのが大豆製品です。日本は大豆製品大国です。醤油、豆腐、納豆、味噌... しかし、その原材料となる大豆の自給率は7%と言われ、およそ9割を輸入に頼っています。大豆なしに成り立たない日本の食生活ですが、ほとんどが海外輸入なのです。そしてそのうちの7割を米国産大豆が占めます。

大豆生産量がそれぞれ世界のベスト10位に入るウクライナとロシアで、現在も戦争が続いており、国際的な大豆の供給量減から、日本においても大豆の価格が値上がりしています。

供給元を国産大豆に切り替えたメーカーも出てきているようです。輸入に頼り切りだった大豆製品業界も、今後変化していくでしょうか。

「全国のスーパーで売られている鶏卵1パック値段は?2023年6月までの鶏卵の価格推移」発表日2023年07月25日|小売物価統計調査による価格推移|日本の物価

味噌に限らず、豆腐や納豆も手作りすることができます。

豆乳ににがりを加えてつくるおぼろ豆腐。沖縄ではゆし豆腐と呼んで、だし汁に豆腐とねぎ、ショウガを加えた、あっさりして美味しいおつゆ。納豆は、納豆菌を使うので、少しコツがいりますが、工程はわりとシンプルです。好みの熟成度を楽しめるのも手作りの良いところ。大豆の香りや舌ざわりが残る、少し早めの熟成でいただいても美味しいですよ。

目だって値上がりしているのが卵です。スーパーに行くと地元産の卵しか並んでいないほどの卵不足ですが、価格も上がっています。鳥インフルエンザの影響なども報道されていますが、それ以前にやはり、ロシア・ウクライナ情勢を受けた飼料高騰の影響が長らく続いてきたことがあります。

穀物価格の上昇で、大きな打撃を受けているのが畜産業界です。鶏はもちろんのこと、沖縄県で深刻化しているのが畜産牛。宮古島は仔牛をブランド地へ供給する繁殖牛が盛んですが、ブランド肥育牛を育てるためにはたくさんの飼料が必要です。しかし飼料高騰が続くと、どうしても新しい仔牛の買い控えに繋がってしまう。

こういった背景で、仔牛の価格が低い状況が続いています。切迫する状況から、畜産農家への支援を求める声が高まっています。
しかし無い袖は振れないというのが県の状況、国のおこなう地方創生臨時交付金に期待を寄せたいところですが、コロナが5類移行して、こうした臨時交付金の支出も抑えられる傾向にあります。

日本ではG7を通してウクライナが持続して戦えるよう支援する宣言を行っていて、世論としては停戦や講和はあり得ないとする向きが強いようです。一方で国内の経済は疲弊し続けています。国民全体で耐えるべきでしょうか。国が責任をもって価格高騰を抑える臨時交付金を支出すべきでしょうか。しかし、こうした財源も、もとは国民の税金です。振れば出る打ち出の小槌があるわけではありません。

(社説)防衛費の財源 欠陥だらけの確保法案:朝日新聞デジタル

一か月ほど前、防衛費増額に向けた財源確保法が可決成立しました。5年間で43兆円の財源を確保するために、1兆円強の増税をめざします。それ以上に大きくのしかかるのは歳出削減です。どこかの財源を削らなければいけないのです。

さらに「決算余剰金の活用」として、余った予備費などを防衛費に繰り入れることになりますが、この予備費こそがコロナ感染症対応地方創生臨時交付金として充てられてきた予算になります。この中に「価格高騰支援」を組み入れて地方に分配していましたが、ここを抑えることで余剰金を防衛費に組み込んでいきたい政府の思惑を考えると、今後、国の臨時交付金は、思うほど期待できないかもしれません。

さらに、日本と中国との関係性もギクシャクしています。

福島第一原発処理水の海洋放出問題をめぐり、中国は日本の水産物に対して「放射性物質検査の強化」を行うことを明らかにしました。税関当局で留め置かれ、輸出が滞る事態となりかねないため、中国への輸出を自粛する動きも出ているようです。

この問題の背景には、日本がアメリカに足並みをそろえる形でおこなう先端半導体装置の輸出規制強化があります。中国政府は、自分たちに向けられた措置であるとして反発しています。こうした状況を考えると、中国の日本に対する水産物の輸入規制は簡単には解かれないかもしれません。

2022年の水産物輸入額、円安で大幅増:過去最高の2兆円に―水産白書 | nippon.com / 先端半導体製造装置 中国などへの輸出手続き厳格化 なぜ? | NHK | 経済安全保障

今、中国をけん制するとして沖縄とその島嶼部に配備されるミサイル部隊も、こうしたアジア周辺地域の緊張を高めるもののひとつです。

相手より強い軍隊を持ち、その力を誇示することが、ひいては安全保障に繋がるのだという考え方があります。しかし、相手をけん制する安全保障レースはエスカレーションするリスクがあります。国民の生活を犠牲にしながら行われる経済対抗措置や、歳出削減・増税措置は、果たしてエスカレーションしないようコントロールできていると言えるのでしょうか。

徐々に値上がりしていく価格(とくに離島では、ガソリンの価格が1Lあたり180円を突破するなど厳しい状況にあります)に囲まれて生活をしていると、時代の息苦しさを肌に感じることがあります。

生活のあらゆるところに、世界につながる窓があります。窓の向こうにある景色を、足を止めて考えてみる機会があってもいいかもしれませんね。
味噌の値段と、あなたの島のミサイル基地。遠いようで、つながる話なのです。