島だより

~2027年 宮古島のあなたへ

保良弾薬庫訓練場:訓練見学会(騒音確認)の背景

射撃訓練場の完成に合わせて陸上自衛隊宮古島駐屯地保良訓練場の見学会が行われました。
報道等では騒音計をかざして数値を測っている場面が流れていましたが、このような見学会となったのには経緯があります。

2018年に行われた防衛省の事前説明会の動画が残っています。
説明にあたった沖縄防衛局と防衛省の担当それぞれが次のように発言しています。

(屋外での演習に騒音や振動をともなうものはあるか?という質問に対し)

防衛省「隊員がおこなう体育訓練、ようは行進ですとか、体力強化等の運動ですね。そういったことを具体的にはやっていくんじゃないかと思っております。一部、車両を使ったりして、車両の展開訓練とかテントを張るだとか、野外訓練だとか、そういったことだと思いますが、騒音とか振動とか、そういったものが生じるとは、基本的には考えておりません。」

沖縄防衛局「およそ全国的にもですね、弾薬庫訓練場でですね、大きな騒音が生じているということはございません。その点はお約束させていただけると思います。」

しかし訓練場開設となった翌月、2021年5月には空砲訓練が行われました。24日に機関銃の発砲音が庭先に響き、25日は火砲による空砲訓練で、ドーンという音が鳴り、近隣住民が様子を見に来ています。

駐屯地に問い合わせた際には、「以前ここはダイナマイトで採石していた採石場だったと聞いている。それに比べれば大きな音ではない」という回答があったと聞いています。
しかし、ダイナマイトで採石していた時代、近隣家屋にその振動が影響していると思われるひびが入り、鉱山会社(宮古総合開発)にダイナマイトの使用をやめるよう求めた経緯があります。

2021年5月の訓練を受けて、市民団体「宮古島平和ネットワーク」では、音の出る訓練を止めるよう沖縄防衛局へ申し入れを行いました。

当初、沖縄平和運動センターの山城博治さんがかけあっていただきましたが、沖縄防衛局は面会を受け入れませんでした。当時衆議院議員の屋良ともひろさんが立ち会っていただけることになって、よくやく2021年6月7日、沖縄防衛局へ出向くことができました。

その際の音声記録は、沖縄防衛局の担当の方の声があまりに小さく、聞き取れない箇所が多いため、概要だけ記載します。

2021年6月7日 沖縄防衛局

――事前説明で騒音・振動を伴う訓練はしないと説明している
 確かにそのように話したが、訓練通知書で通知している。

――毎月届く一枚の紙で説明すれば、事前説明と違う訓練を行えるのか?
 (回答なし)

――訓練通知書にあるヘリの訓練は、事前説明では説明されていないはず。
 平成28年に説明をしている。

――保良への事前説明は平成30年が初回である。平成28年は宮古島市全体への説明会で、まだ保良が用地の候補にも出ていなかった時期だ。その時にすでに訓練場にはヘリが離発着する想定だったなら、なぜ平成30年の保良への事前説明では一切説明を行わなかったのか。
 (沈黙、回答なし)

こうした経緯があり、沖縄防衛局・宮古島駐屯地としては「再度、地域へ説明会を開く」という方針を決めたものと思います。

2021年8月、宮古島駐屯地から保良・七又自治会に見学会の申し入れがありました。

しかし「対象は近隣住民のみ」「メディアおよび撮影不可」「マイクロバスで敷地内に入り、説明を受ける」という超クローズドな見学会であったため、駐屯地に何度も確認し、市民団体「宮古島平和ネットワーク」から、宮古島市長宛で「説明会は透明性をもったものにするよう」求める要請を提出しました。

結局この見学会は、拡大するコロナウイルス感染症の影響から取りやめとなりました。
2021年5月の空砲訓練を受けて沖縄防衛局へ申し入れをしてから、以降、音の出る訓練は行われてきませんでした。

そして今年、2023年4月、射撃訓練場の開設と合わせて、再びの見学会開催が予定されました。
保良訓練場では数日前から空砲訓練を行い、当日までに音を確認するようにとの通知書が配布されました。

この見学会前日に伊良部島沖の陸自ヘリ墜落事故が起き、見学会は延期となります。

見学会予定日の翌日は、保良自治会の一年に一度の新年度総会でした。ここで「集落内を軍用車両が通らないよう」「音の出る訓練をしないよう」求める要望書をそれぞれ賛成多数で決議し、5月15日、宮古島駐屯地へと提出しています。

当日、書類を受取りに来た職務室担当者は「ご理解いただけるよう説明する」との一点張りで、再度行う説明会で説明した実績がつくれれば、訓練ができるようになるとしか考えていないことが伝わってくるのでした。

こういった経緯からの2023年7月の見学会でした。
本来は見学会自体開かれなければ事前説明と異なる訓練は行われないのですが、どの地域にも容認の方はいるもので、全員で出席しないということは難しいものです。

自治会からの要請は、今回の見学会にどのように反映されているのか?と駐屯地に確認したところ、見学会内容は4月とほぼ同じものの、「当日の住民の意見を受けて今後のことを考える」という説明もあったため、音の出る訓練に反対の意見を伝えるためにも、地域住民として見学会に参加しました。

見学会当日の記録は、別の記事にまとめました。

広報担当者は、訓練において騒音計で測った数値をもとに「言い訳がましいかもしれませんが」と前置きして、「騒音だとは認識しておりません」と回答されました。

しかし事前説明の動画を見れば分かるように、「体力づくりと車両展開」「全国でも騒音というようなことはないとお約束できる」という発言を信頼するのなら、騒音計を持ち出して数値を測るようなこと自体、起こるはずがないのです。

隊員が訓練するのは当たり前のことなので「ご理解いただきたい」という言葉が繰り返されましたが、それならば、フェンスから歩いて50メートルのところに団地や宿や住宅のあるような場所に、訓練場を作るべきではないのです。用地選定自体、間違いだったと言わざるを得ません。

宮古島駐屯地(千代田地区)の用地選定は、赤字のゴルフ場を防衛省に売却できるとして、当時の市長がゴルフ場経営者から600万円受け取った案件で起訴され、全国に知られるところとなりました。

宮古島における防衛省の用地選定は正当だったのでしょうか。生活圏に弾薬庫訓練場があることが、あってなはらない配備であると思っています。

千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書Ⅰ)

第五十八条 攻撃の影響に対する予防措置
紛争当事者は、実行可能な最大限度まで、次のことを行う。
(a)第四条約第四十九条の規定の適用を妨げることなく、自国の支配の下にある文民たる住民、個々の文民及び民用物を軍事目標の近傍から移動させるよう努めること。
(b)人口の集中している地域又はその付近に軍事目標を設けることを避けること。
(c)自国の支配の下にある文民たる住民、個々の文民及び民用物を軍事行動から生ずる危険から保護するため、その他の必要な予防措置をとること。

時系列

2018年2月 防衛省事前説明会にて「更新など体力訓練、車両訓練など」「全国的にも騒音・振動はない」と説明

2021年4月 保良弾薬庫訓練場開設
2021年5月 空砲訓練(機関銃、迫撃砲等)
2021年6月 宮古島平和ネットワーク:沖縄防衛局へ音の出る訓練を行わないよう申し入れ
2021年8月 駐屯地による見学会の打診(メディア・録画不可)/不透明な説明会を開催しないよう求める市長要請
2021年8月 見学会、コロナ拡大期で中止

2023年4月 射撃訓練場開設・空砲訓練の事前通知
2023年4月 見学会前日、陸自ヘリ事故で延期
2023年4月 保良自治会で「集落内を軍用車両で通過しないよう」「音の出る訓練をしないよう」求める要請書決議
2023年5月 保良自治会:要請書を駐屯地へ提出
2023年7月 空砲訓練の事前通知
2023年7月 見学会開催、空砲訓練について「騒音と認識してない」「住民の意見を無視するつもりはない」などの発言あり